昨晩見た夢を珍しく覚えているのでここに供養しようと思う。
西欧の城というか、年季の入った洋館というべきか。とにかく歩くだけでギシギシいうような板張りの長い廊下と、気の遠くなるほど高い塔がある建物だった。
夕餉を終え、自室に帰るべく塔に向かう。いざエレベーターに乗り込んだその時。突然地面が揺れだした。地震か?よくわからない。出口めがけて逃げ惑う人の流れにのって私も逃げる。狭い階段をひたすら降りる。
何度踊り場を過ぎただろう。いつまでたっても下に着かない。ふと見上げると、上の方が霞んで見えなくなっている。いつまで階段を降りればいいのだろう。
「これを被りなさい」
ふいに聞こえたその声は、名前こそ聞いたことがあるもののお互い面識は無い、そんな人の声だった。
「これを被れば見つからないから」
そういって私に帽子を手渡した。ツバの深い黒い帽子で、コウモリの羽が添えられている。
「見つからない?」「敵に」
敵に?
ここで記憶が途切れている