利き手の骨を折ったこと。

先日、右親指・中手骨を折った。指の付け根と手の付け根の間の骨だ。

治るまで9週間。長い戦いを忘れないうちに文字に残しておこうと思う。

一番難儀したのは、右手を洗えないことだ。当然包帯でぐるぐる巻きにするので、頻繁に洗うことはできない。手汗がひどい体質だから、いつ何時も、平常時でさえ汗が手を覆うのだ。すなわち、汗が包帯に染み付き異臭を放つことを意味する。マスク越しですら漂うその匂いは苦痛そのものであった。

入浴も苦労した。右手にレジ袋を被せ、左手でせっけんを持ち、左手で全身を、左腕は胴にこすりつけ泡立てた。脚にシャワーヘッドを挟み、左手でお湯を出す。そして頭皮は左手でゴシゴシ。あまり洗えていなかったようだ。シャワーのお湯が右手にかかるとこれまた異臭のもととなるので神経を使う。苦痛というほどではないが面倒であった。

筆記。意外なことにあまり苦労しなかった。筆記が困難であることは事前に想定していたため、周囲に"配慮"をお願いしたため、そもそも書く機会がなかったという前提はあるが。指を伸ばしたまま添え木で固定していたので、書きづらいということはあったが痛くは無かった。というか添え木が無いと痛くて書けなかった。

食事。左手でフォークやらスプーンやらを使って食べていた。ラーメンやそばのように箸を使う食べ物は選択肢から除外された。当然両手で食べる料理もNGだ。

 

日常生活において、全般的に片手が使えないのはあまりに不便であった。つり革につかまるだけで精いっぱいで、食器を洗ったり雑巾を絞るのは不可能に近い。寝転がってスマホを操作したところ、顔面に落下してきたのは1度や2度ではない。改札機が右利きに最適化されているということも身をもって体験した。

最後に。診察にあたられた整形外科の皆さん、私を心配し優しい言葉をかけてくださった皆さん、そして定期的に包帯を取り替えてくれた親にこの場を借りて御礼申し上げます。